Conversation 06

Guest岡崎体育|ミュージシャン

Profile

岡崎体育

おかざきたいいく/1989年生まれ。ミュージシャン。京都府生まれ。地元で実家住まい&アルバイト生活を続けながら、活動を開始。「盆地テクノ(BASIN TECHNO)」の伝道師を名乗る。独創的なミュージックビデオがYouTubeやTwitterで話題となり、徐々に認知度を高めていく。2016年5月にメジャーデビュー・アルバム『BASIN TECHNO』をリリース。同作収録のミュージックビデオあるあるを歌った「MUSIC VIDEO」のMVが、第20回文化庁メディア芸術祭で新人賞を受賞。2017年にセカンド・アルバム『XXL』をリリース。

岡崎体育に聞く
音楽を続けるためのいくつかの戦略

対談第6回目は、ミュージシャンの岡崎体育。ミュージックビデオでよく見られる演出を歌にした「MUSIC VIDEO」がYouTubeで話題となり、現在2000万回以上再生されている。最新アルバム『XXL』においても、クールなロックサウンドに、サビの歌詞で動物たちが登場する「感情のピクセル」や、日本語の歌詞だが英語のように聞こえる「Natural Lips」など、「ネタ曲」が強力なインパクトを与えている。そこにある「音楽を続けるための戦略」を聞いた。

  1. 1.「ネタ曲」か「まじめな曲」か?
  2. 2.「才能」ってなんですか?
  3. 3. ツッコミか、はたまた大ボケか?
  4. 4. 岡崎体育は勇者なのか?

◇「ネタ曲」or「まじめな曲」?

ぼくりり

“岡崎さんはいわゆる「ネタ曲」と、「まじめな曲」とを意図的に分けていますよね”

岡崎

“時代はどんどん早いスピードで流れていくし、その速度に対応するには、変遷を意識しないといけない”

ぼくりり:岡崎さんの『XXL』3枚買いました!

岡崎:ありがとうございます!

ぼくりり:ファースト・アルバム『BASIN TECHNO』の頃からファンだったのですが、とくに今回『XXL』のリリースにあたって「CDを10万枚売るぞ!」と宣言されていて、それがめちゃくちゃすごいことだと思いました! 尊敬しています!

岡崎:いまどきCDを10万枚売るぞと発信しているのは、前時代的だと思います。でも明確な数字の目標を宣言することで、自分を鼓舞できる。お客さんからしても、目で見える目標があったほうが応援したくなるんじゃないかな。

ぼくりり:そう思います! ぼくも応援したくなって3枚買いましたが、CDを買ったのは1年ぶりくらいです。

岡崎:やっぱもう買わんねんな。まったく買わない? CDって?

ぼくりり:Apple Music最高だな〜〜って感じです。岡崎さんは買います?

岡崎:買う買う。好きなバンドとかアーティストのは買うし。でも配信でも聞けるようになっている今、CDって「お布施」になっていますよね。お客さんが買うことで、ランキングに入ったり、その結果、テレビに出てファンが増えたりする。

そういう状況でも、歌詞カードやジャケットにこだわって、家に置いておきたい気持ちになるCDをつくれたらいいなと思っています。自分が中高生のときは、好きなバンドのCDの発売日の情報を得て、学校が終わったらチャリンコで買いに行ってました。そういう手に取る喜びみたいなものが、今の若い子らにもあったらいいなと思っていますね。

ぼくりり:音楽が音としての良し悪しのみで評価されるんじゃなくて、その他の部分でバズらせて音楽を広める、という形が増えてきていると思います。それこそ、岡崎さんの「MUSIC VIDEO外部リンク:https://www.youtube.com/watch?v=fTwAz1JC4yI」も「ミュージックビデオあるある」でバズりました。ぼくもそれで知りましたし。音楽や、その広まり方が変容していることについてどう思いますか。

岡崎:それ自体は問題視してないですね。大きな波に乗れるか乗れないかの違いだと思います。乗れると生き残れて、乗れないと溺れる。新しいアイデアや概念は批判したくない。

ぼくも、今やっている音楽を半ばピエロみたいな感覚でやっているところがあって。どれだけネットで面白いことをして、お客さんを引き込んで最終的なセールスにつなげるかを考えています。そこを「下世話なネタ曲ばっかりじゃん」と批判する人ももちろんいます。でもそういう人は今後、時代の波に乗れないんじゃないかと思っている。

ぼくりり:岡崎さんはいわゆる「ネタ曲」と、「まじめな曲」とを意図的に分けていますよね。

岡崎:「ネタ曲」で興味をもってもらって、「まじめな曲」をいいなと思ってもらう作戦です。同じネタ曲でも前回の「MUSIC VIDEO」よりも、今回の「感情のピクセル」の方が音楽性に重点を置いていて、音楽を聴いている層を取り込もうと思っています。

ぼくりり:それ、なんかすごく少年マンガみたいだなあと思ったんです。「MUSIC VIDEO」のとき、「映像としては面白いけど曲単体では成立しないんじゃないか」という批判が見られました(ぼくの観測範囲で)。でも、「感情のピクセル外部リンク:https://www.youtube.com/watch?v=3yoJY0IqiV0」はその指摘された弱点を見事に克服して、それを超えるものになっていると思います。そういう流れ、ちょっとバトルマンガみたいじゃないですか?

岡崎:お客さんの意見を取り入れずに第一線で活動できるアーティストって、きっと1%以下だと思うんです。時代はどんどん早いスピードで流れていくし、その速度に対応するには、変遷を意識しないといけない。そのためには、自分がカリスマ性を持っていると自意識過剰にならずに、市井の人と同じ感覚を持ち続けることが大事なんじゃないかな。

◇「才能」ってなんですか?

ぼくりり

“ぼくは最近、音楽に対しての自尊心、というか自信みたいなものがなくなってきて”

岡崎

“本当にトップクラスのミュージシャンは音楽を違った視点でみていて、ふだん音楽を聴かないという人もいる”

ぼくりり:ちなみに岡崎さんの中で、目標というか、目指す方向が同じ、あるいは近いと感じている人っているんですか?

岡崎:ネタ曲を武器にしているという点で、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんです。「女々しくて」で大ヒットして、ずっと第一線でやっていますよね。

この前、ある雑誌で対談したとき、「まじめな曲をつくるのをあきらめた」とおっしゃっていて。こういう考え方もあるんやと思いました。悟りのようなものを開かれた。ぼくも今はまじめな曲をやりたいと思っているけど、鬼龍院さんのような年齢になったり、そのステージまでたどり着いたら、将来的に悟りを開くかもしれない。

ぼくりり:ゴールデンボンバーはバンドですが、岡崎さんはバンドで活動しようと思ったことはあるんですか?

岡崎:昔バンドを組んでいたことがあるんだけど、すぐケンカしました。ずっと俺が4人いればいいのになと思ってました。そこでバンドは無理だと悟って。今は一人で活動しているほうが楽だし、仲間もいっぱいいます。

ぼくりり:ぼくもあんまり、誰かと一緒にやろうと思ったことがないです。

岡崎:りりっくんは、ぼくと一緒で自尊心が高いタイプだと思います。自尊心の高いヤツが、誰かとなんかやろうとするのは間違いなんで。もったいないし、つぶされることもあるし。自尊心が高くて売れないヤツはしょうがないけど、自尊心高くて世間に認められているのであれば、長くできるだろうし。そこは「賭け」だと思うな。

ぼくりり:自尊心ですか……。ぼくは最近、音楽に対しての自尊心、というか自信みたいなものがなくなってきて。さらに言ってしまうと、音楽そのものに興味がなくなってきて。

岡崎:あら、大変。

ぼくりり:それは、音楽をやりたくないというよりも、自分のセンスに対する自信やこだわりがなくなってきたんですね。昔は、“カッコいい”音楽が絶対だと思っていて、それを判断するのは自分だったんです。“ダサい”のは絶対によくないことだと思っていた。でも今は、ぼくが聞いてどんなにダサいと思う曲でもそれで救われる人がいたら、その曲のほうがその人にとって意味がある。どこまで行っても主観でしかないんですよね。こうやりたい、俺の正解はこうだ、というものを提示する欲求が失われてきているんです。

岡崎:話を聞いていると、りりっくんは音楽を“できるから”やっているんだと思う。絵の才能があったり、映像の才能があったら、そのフィールドで開花してたんだろうなって。たまたま、音楽の才能を与えられたから音楽をやっている。それは頂点を目指すタイプのアーティストには重要なことだと思います。本当にトップクラスのミュージシャンは音楽を違った視点でみていて、ふだん音楽を聴かないという人もいる。その潜在能力が19歳にしてあるというのは、恐ろしいことだと思うよ。

ぼくりり:岡崎さんは「才能」ってなんだと思いますか?

岡崎:音楽業界にはたくさんのアーティストがいて、みんなそれぞれ才能があって、自分に才能があると思ってやっている。それは、その人たちが生きてきた中で、「音楽できるんや、俺」って思ったから。俺も人より早くリコーダー吹けるようになったし。

『花さか天使テンテンくん』(小栗かずまた、集英社)という漫画があって。人間は天国で才能の種をもらって生まれてくるんだけど、主人公のひろゆき君はなんの才能も持たずに生まれてしまう。それはテンテン君という天使が間違って梅干しの種を与えちゃったから。テンテン君がいろんな才能の種を彼に渡して、本当の才能をみつけるっていう話です。才能ってそういうものだと思っていて、いろいろ試して見つかるもんなんじゃないかな。

◇ツッコミか、はたまた大ボケか

ぼくりり

“岡崎さんの作品って、すごく上手に「余白」を残していると思うんです”

岡崎

“ぼくって自分自身が「いいビジュアル」してるなって思うんですよ。シュッとしていないし、どこにでもいる顔”

ぼくりり:ネタ曲をつくれることがまさに才能だと思うのですが、そのネタはどうやって思いつくんですか?

岡崎:日々の生活で感じることの中からですね。「なんでやねん」と思うことが多くて。フェスでめっちゃ難しいコール&レスポンスをやるバンドがあって、案の定お客さんができないのをみて「これ、おもろいな」とか。ネタにできるものがあるか、日ごろから意識を向けています。

ぼくりり:岡崎さんの作品って、すごく上手に「余白」を残していると思うんです。たとえば、「感情のピクセル」では、非常にハイクオリティなラウドロックなのにサビの歌詞で「どうぶつさんたち」が大集合したりする同曲のサビ部分では「どうぶつさんたちだいしゅうごうだ わいわい」というフレーズが歌われる。また、MV中にもうさぎやゾウ、ワニといった着ぐるみの動物たちが頻繁に登場し、ライブでもステージに登場する演出があるじゃないですか。お客さんが「なんで動物なんだよ!」とツッコむことで、初めて作品が完成してると思うんですよね。それって、まさにコミュニケーションですし、今あるべきエンターテイメントだなって思うんです。ツッコミを入れる人は大勢いる、というかツイッターなどによって全員がツッコめる状態になっている。いわばツッコミが飽和している中で、それに対して大ボケをいれてくるのがすごい。

岡崎:そうなんや。大ボケを放り込んでいるつもりはなかった。ぼくがツッコミを入れて完成していると思っていました。でもりりっくんが言うには、そのツッコみを曲に落とし込むことがひとつのボケに見えていると。そこまで意識していなかったので、新たな発見だな。

ぼくりり:ええっ、あえて余白を残しているのかと思いこんでました。

岡崎:まぐれです。SNSとかではあえて自虐的なネタを放り込んで、ツッコミどころを残すこともありますけど。作品づくりで意識したことはなかった。りりっくんは余白を残しているの?

ぼくりり:いえ、これまでぼくは作品を100%自分の中で完結させてきました。で、他のアーティストの作品ややり方を研究して、自分に足りないものを探す中で、そういう余白の重要性に気づきました。でも、岡崎さんのように笑いをとろうというタイプではないし、この理論を自分にあてはめたとき、一体なにが余白なんだろう? って考えてみてます。Twitterでたくさん「おなかへった」と言うことでの余白はあるかもしれませんが。

岡崎:「こいつ、いっつもおなかへってるけどなんやねん」みたいな?

ぼくりり:的なことです。

岡崎:お腹すいてるキャラでいくんや……。余白について今考えたんだけど、ぼくって自分自身が「いいビジュアル」してるなって思うんですよ。シュッとしていないし、どこにでもいる顔。ビジュアルがよくないと自分から伝えることで、「こいつには強くツッコんでいいんや」とお客さんに思ってもらえる。それこそ余白なのかもしれない。

ぼくりり:岡崎さんってよく自分の悪口だけを「いいね」しているじゃないですか(『XXL』が発売される以前)。それ、面白いなあと思って。自分への悪口を見ると、しんどくないですか? 相手が幼いだけだと頭ではわかるけれども、悪口ってなんか毒みたいに蓄積していくところがある、気がします。

岡崎:どっかのタイミングでその感情が消えましたね。まあ、この仕事してたら出てくるやろうなって。だから、アンチ的なつぶやきに「いいね」押すのも、ストレス解消だと思ってる。へいへいへいへい! みたいな。

ぼくりり:みてるぞー! って。

岡崎:でも今は自分の「いいね」が人のタイムラインに現れはじめたじゃないですか。「その機能なんやねん、リツイートやんけ」と思うんだけど。そこに気づいてからは、ファンの人たちもいい気持ちしないだろうし「いいね」は減りましたね。りりっくんは批判されてるイメージないけど?

ぼくりり:批判というか、「顔がうざい」くらいの話です。岡崎さんの場合は、狙ってやっているにしても、そういう反応を誘発しやすいスタイルですよね。強いなと思います。

岡崎:ある程度の期間が過ぎると、なくなるものだと考えています。ゴールデンボンバーだって最初は「なんだこいつら、白塗りで」って批判されたと思うんですよ。でも今、そんなことを思う人はいないでしょ? 違和感って慣れたら消えていく。慣れてもらうためには、自分が第一線に出続けるしかない。だからワーワー言ってくる人の対処法としては、自分が売れ続けることだけ。

◇岡崎体育は勇者なのか?

ぼくりり

“これから、売れるためにネタ曲は書き続けていくんですか?”

岡崎

“長く音楽を続けたいし、40歳以降までどう続けていくかは考えています”

ぼくりり:これから、売れるためにネタ曲は書き続けていくんですか?

岡崎:そうですね。ネタ曲が望まれていると思っていますし、やめるのは今じゃない。ステージに立ってパフォーマンスをしなくなったときに、やめるかもしれませんね。今はステージで活動する時期だと思うし、自分がやりたいことは身体が衰えてからでもできるから。

ぼくりり:今はやりたいことをしていない?

岡崎:究極的には、やりたいことではないかもしれない。ウケたときは嬉しいし気持ちいいけど。できることなら、カッコイイ音楽をやりたい(笑)。

ぼくりり:ええー、意外。

岡崎:「今の活動のほうが引きはあるやろうし」という意識でやっています。今は若い子たちの感覚に寄り添える本当にギリギリの年齢だと思っていて、たぶん30過ぎたら感性も衰えてくるでしょうし。中高生との間隔も開いていく。

20代のうちはピエロみたいなことをやって、ぼくの存在を知ってもらう。今のうちからやりたいことをやっても、注目を集められないから効率的ではない。30歳を過ぎてから好きなことをやって、残ってくれる人に聞いてもらおうと。長く音楽を続けたいし、40歳以降までどう続けていくかは考えています。りりっくんは30歳になったときに、どうしてると思う。

ぼくりり:……想像できなすぎるなあ。

岡崎:ぼくが19のときはこのフィールドにもいないし。りりっくんは、考えの成熟が早すぎるんだろうね。現状でハイクラスなモノの見方ができているから、たぶんこのままの感覚でいけると思うし。変遷とか意識しないでいいタイプなんじゃないかな。

ぼくりり:今日お話ししてみて、岡崎さんはすごく線で物事をみて、戦略的な考え方をするほうなんだと感じました。ぼくはいろんなところをフラフラしてるだけなんですけど、岡崎さんは勇者で、成長を経て魔王を倒しにいこうとしているんだなって。

岡崎:ははは、それはどうでしょう。ただ、できるだけ長く音楽をやっていきたいと思っています。ジジイになってもう1回、りりっくんと対談したいですね。

Text_Potato Yamamoto