Conversation 02

Guest紗倉まな|AV女優

Profile

紗倉まな

さくら・まな/1993年生まれ。AV女優、小説家。高専在学中に『紗倉まな AVDebut』でAVデビュー。「SOD大賞2012最優秀女優賞受賞」「スカパーアダルト放送大賞2013」「新人女優賞・FLASH賞」「DMM.R18アダルトアワード2016」など、数々の賞を受賞。『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』での好演が話題を呼ぶ。2015年にはエッセイ『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社)が大ヒット、2016年には小説『最低。』(KADOKAWA/メディアファクトリー)を発表するなどマルチな活躍を見せている。特技は、測量、英語、ドイツ語。

AV女優・紗倉まなが教える
自分らしくいるためのいくつかの方法

対談第2回目は、高等専門学校の土木科在学中に鮮烈なデビューをはたし、今も第一線を走り続けるAV女優の紗倉まな。執筆活動や映画出演など、幅広い才能で独自の発信を続けている。自分の人生を切り開いてきた紗倉さんに、情報があふれた時代に自分らしく生きるための方法を聞いた。

  1. 1.自分のキャラクターに縛られないほうがいい?
  2. 2.いつの間にか流れている情報をコピペしている?
  3. 3.「普通」を受け入れる才能が幸せへの道?
  4. 4.失敗しても誰も覚えていない?

◇自分のキャラクターに縛られないほうがいい?

ぼくりり

“自分で作ったキャラクターが、もしかしたら自分の首を絞めるときがくるのかも”

紗倉

“自分のキャラに縛られて言葉が狭まることよりも、そのときの気分で変えていこうって”

ぼくりり:すいません、緊張して目を合わせられなくて……。

紗倉:いやいや、そんな(笑)。まさか、AV事務所にぼくりりさんが来てくださる日が来るなんて。

ぼくりり:今回の企画の目的のひとつとして、このメディアを通して、中高生の子たちがやりたいことに挑戦する抵抗感を減らせればいいなと考えているんです。

紗倉:村上龍さんの『13歳のハローワーク村上龍著、はまのゆか絵、2003年に幻冬舎から発行された本。514種類(改訂版では593)の職業を、花、動物、スポーツ、テレビ、おしゃれ、料理など、の切り口で百科事典のように紹介している。127万部突破のベストセラーになり、全国の小中学校図書館に並んでいる。2010年には『新13歳のハローワークが刊行され、2006年にはボードゲーム化、2012年にはTOKIOの松岡昌宏主演で連続ドラマ化された。公式サイト→http://www.13hw.com/home/index.html』みたいですね。私も中学時代に読んで、いろんな仕事があるんだなあと思いましたよ。

ぼくりり:わっ、鋭いですね。じつは、企画会議のときにぼくりり版『13歳のハローワーク』をつくろうっていう話が出てました。ちなみに、本にはAV女優の仕事は載っていましたか?

紗倉:たぶんなかったと思いますよ。もしあったとしても、すごく薄かったり、扱いが小さいだろうなって気はします。その分、私は惹かれちゃいますけどね。

ぼくりり:少し前まで、AV女優の方々は必要に迫られてデビューされると思っていたんですが、紗倉さんは高専にいた18歳の誕生日に、自分から会社に電話して能動的にAV業界に入られますよね。しかも、いきなり「業界で一番になりたい!」と言って入っていく。そのきっかけはなんだったんですか?

紗倉:18歳のときは、学校の勉強も好きでしたが、毎朝会社に行く生活をずっと続けていくことが想像できなくて。毎日違う生活じゃないと飽きちゃうと感じたんです。ひとつのところで何か繰り返す才能がないのであれば、何か武器がないと外には出られない。その武器ってなんだろうと考えたとき、アイドルでもないし、女優になりたいわけでもない。そこで浮かんできたのが「裸」だったんです。

裸を武器にして極めている人っているのかな? 一番になりたい!って。でも、実際入ってみたら、思ったより人もたくさんいるし、浅はかだったなと思います(笑)。ぼくりりさんは、もともと音楽が趣味だったんですか?

ぼくりり:そうですね。中学ではバスケ部に入ったんですけど、走るのが辛くて、一日でやめました。しばらくインターネットで音楽を聴くだけの生活を送っていて、そこから音楽を投稿しはじめたんです。

紗倉:一日でやめるのは潔さがありますね。向いているものと向いていないものについて、自分の中で一線を引くのが速いんでしょうね。

ぼくりり:紗倉さんも、高校で自分のやりたいことをスパッと決めていますよね。ぼくと紗倉さんは、デビュー時の年齢が同じだったりして、いくつか共通点があると思いました。

紗倉さんの本『高専生だった私が出会った世界でたったひとつの天職』の中で、はじめは初々しさがウリだったけど、出演を繰り返していくうちにどんどん初々しさがなくなっていったと書かれていたところがすごく面白かったです。ぼくもTwitterで「おなかへった」とか「ウケる」というツイートを繰り返すことによって、“歌詞では語彙が豊富なのに、Twitterでは語彙力が消滅している”、というギャップを作ってほのぼの感を演出しています。でも、そういった自分で作ったキャラクター(=強み)が、もしかしたら自分の首を絞めるときがくるのかも、と思います。何かのスキャンダルで急激にイメージダウンしてしまうんじゃないかとか。

紗倉:私もデビューしたのが18だったので、最初は「ロリ枠」――ロリ枠ってなんだよって感じはありますが(笑)――でしたが、そこから成人してロリではなくなりました。ネットでは「おっぱいが垂れてきた」「乳首の色が」「そろそろ潮時?」なんて書かれますが、かといってまだ熟女という年でもないし、中途半端だなと思います。

ぼくりり:えー、ひどいこと書きますね……。そんなことないと思います!

紗倉:でも、今ならなんでも言える気もしています。前はお酒を飲めなかったけれど、今は「酔っぱらった」とかTwitterに書いちゃうし。自分のキャラに縛られて言葉が狭まることよりも、そのときの気分で変えていこうって思っています。季節が移り変わるように、状況次第で変わっていくのもひとつの個性なんじゃないかな。

ぼくりり:自分のキャラクターに縛られないほうがいいのかもしれませんね。

紗倉:私のキャラだったらこう言わないだろうなとか。リプライひとつとっても、こういうニュアンスを込めたら「さすがだね」って周りが思ってくれるだろうなとか。そうやっていると、だんだん窮屈になっていきますよね。

ぼくりり:めっちゃわかります。自分自身というか、周りがどう自分のことをどう思っているのかばっかり考えることになってしまいますよね。

◇いつの間にか流れている情報をコピペしている?

ぼくりり

“感情を動かされるように加工されたストーリーを無条件に受け入れてしまいがち”

紗倉

“喜怒哀楽の感情の中でも、とくに「怒り」が一番人の感情を刺激すると思う”

紗倉:しかも、ネットっていろんな人がいるから、自分がエゴサしたら、いろいろ見えちゃうじゃないですか。

ぼくりり:ぼくは毎分エゴサしています。いろんな名前でしますよね。ひらがなとか、カタカナとか、漢字間違っているバージョンとか。「ぼくりり」で検索したり、「ぼくのりりっくぼうよみ」と2個目の「の」を忘れる人もいるので、それも検索します。見ちゃいますよね。

紗倉:見ます。気になりますもん。あと、私は「ブロック大使」なので、コイツ気に食わないなと思ったらすぐブロックするんです。何千人単位でしています。 昔、「ブロックしすぎワロタwww」みたいなまとめができました。先日、吉田豪さんと対談したのですが、対談後に「ぼく、じつはTwitterブロックされているんです」と言われて(笑)。

ぼくりり:ウケる(笑)。

紗倉:私も記憶がなくて。本当に、超失礼な話なんですけれども。今はもちろんブロックを解除しました!

ぼくりり:人の目を気にしてやっているSNSって、言葉を狭める可能性もあると思うんですが、紗倉さんは、Twitterをやめたくなる瞬間はありますか?

紗倉:いまは自分から発信してコンテンツをつくっていかなきゃいけないから、どうしてもやらざるをえないですよね。SNSばっかりやっていて、依存しているのは嫌だと感じることもあります。胸の谷間がこれくらい見えたら1000ファボいける! これだったら凍結されない! とか。そんなことばかり考えちゃうんですよ。

ぼくりり:ぼくもずっと「いいね!」ボタンを押し続けていて、今の回数は45万回くらいなのですが、そのせいでしばしばアカウントをロックされたりします……。見たやつを全部押しているんです。「いいね!」を押すことで、その人の通知欄にぼくがでてくるので、だんだん刷り込んでいきたいなあと。

紗倉:それ効果ありますよね。記憶のどこかにいるというか。それって恋心と一緒で、好きって言われたら好きって思うのと一緒ですね。すごいなあ。

ぼくりり:いま、Twitterを見ているとどんどん情報が流れていきますよね。この前リリースした『Noah’s Ark』というアルバムでは、人びとが情報の洪水によって自由意志を喪失していく様を描きました。無限に情報が溢れているせいで、それらを精査して取捨選択する時間や余裕を失っていて、本来はそのプロセスにこそ自分の個性や自由意志が現れるものだと思っています。

紗倉:めっちゃわかります。悪意のあるタイトルをつければ、同じ内容でもそれで人は影響されますよね。私も今まで「ありきたりな波から外れよう。自分らしく生きよう。Go my way!」と思っていたはずなのに、いつの間にか流れている情報をコピペして、自分が考えたかのように他人の意見をしゃべっている時もあります。私ってつまらなくなったなと思うこともあります。

ぼくりり:感情を動かされるように加工されたストーリーを無条件に受け入れてしまいがちですよね。この前、「火事に遭った家の写真」を無断転載して「米軍に爆撃された病院の写真」ということにしているツイートがシェアされているのを見てめちゃくちゃ笑いました。

紗倉:喜怒哀楽の感情の中でも、とくに「怒り」が一番人の感情を刺激しやすいなと思っています。吉田豪さんをブロックしたのもそうですし。もし、自分が攻撃されなかったとしても、人が悪者にされて叩かれているのを見て、自分はされたくないなと思うんだけど、面白いなとも感じて覗いてしまう。いざ自分がまきこまれたら本当につらいんですけどね。

◇「普通」を受け入れる才能が幸せへの道?

ぼくりり

“最近、「普通」が崩壊してきていると思うんです”

紗倉

“同じことを繰り返せる才能があるのか、毎日違うことのほうがいいのか”

ぼくりり:唐突ですが、紗倉さんにとって幸せの定義はありますか?

紗倉:仕事も特殊だからかもしれませんが、普通であり続けることが幸せだなと思っています。思慮深すぎると幸せじゃない。普通の感覚とか、普通に何も疑わないとか、普通にごはん食べることが幸せなのかなって最近思うんです。

ぼくりり:うーん、「普通」ですか。最近、「普通」が崩壊してきていると思うんです。これまでは、大学にいって、就職して、結婚してというのがある程度決まっていましたが、今はもうそうでもないと思いますし……。普通の人って誰なんでしょうか。

紗倉:「普通」はこういうものだと書かれているわけではないですからね。こうやってステップを踏んだらどうなるのか、なんとなくわかっても、人生そんなにすんなりいかないですからね。

ぼくりり:紗倉さんは、「ありきたりなこと」への拒否反応があるのに、「普通」が幸せだというのはなぜですか。

紗倉:私は幸せに限りなく遠いところにいると思っています。今の自分は楽しいけれど、波があって不安定です。本当は普通の幸せがほしいわけじゃないんだけど、時々、普通に生活している人がすごく幸せそうに見える。ないものねだりみたいなものだと思うんですけど。

ぼくりり:幸せの定義って自分がどうなりたいかによりますよね。ぼくは「やりたいことがやれるタイミングでできること」が幸せだと思っています。

紗倉:それって誰しもができることじゃなくて、まれなものだと思うんです。多くの人は、普通の幸せを歩んでいくわけで、それは普通を受け入れる才能なんですよ。同じことを繰り返せる才能があるのか、毎日違うことのほうがいいのか。どっちが自分に向いているのかは自分が決めることだから、早いうちから自分がどっちなのか見極めたほうがいいと思っています。

◇失敗しても誰も覚えていない?

ぼくりり

“ぼくが音楽をはじめたのが、「人からどう見られているのか」がすごい気になっていた時期なんです”

紗倉

“自分の中では黒歴史でも、ほかの人は全然覚えてないですよ”

ぼくりり:「普通」である才能か……。面白いですね。

紗倉:でも、私はぼくりりさんが、「天才」って呼ばれているの、すごくうらやましいですけどね。中学生のときは、学校で天才と思われたくて。でも、努力していたら天才じゃないから、勉強をしていないふりをしつつ、家で超勉強していました(笑)。それでいい点を取って「天才じゃない?」と言われるのが超いいなと思っていたんです。天才の人からすれば「素振りしていたら、ボールがたまたま当たっただけだよ」という感覚なのかもしれないけど。

ぼくりり:このメディアは、中高生にやりたいことに挑戦してほしいと思ってはじめた部分があるんですけど、それって押しつけなんじゃないかと思うことがあります。ぼくは自分の音楽がたまたま評価されたから「みんなやったほうがいいよ」と言ってしまうけど。それって、生存者バイアス生存バイアスとも呼ばれる。生き残った人々を基準にしているため、判断材料が少なく、誤った判断をしてしまうこと。成功者の裏には無数の失敗者がいるが、なにかを語れるのは競争を勝ち残った者だけ。その偏った成功者の話を鵜呑みにするのは危険ではないか? という文脈で使われる。なのかなと思うんですよ。不良がいっぱいいる高校から一流大学にいった人が「底辺大学だからといって勉強しないのは甘えだ」というロジックになるのと一緒ですよね。押しつけがましくなってないかなあ……

紗倉:自分が体験したことは、何よりの経験だと思いますよ。だから、おススメすることは何も押しつけがましいことではない。向いているのか向いていないのかって難しい。私は書き物の才能があるとは思わないけど、好きで続けていたら作品として残ることだけはわかった。だから私はほかの人に「文章を書けば」とすぐ言ってしまいます。才能よりも、自分がエネルギーを発散させるところを見つけることのほうが重要だと思うんです。

ぼくりり:ああ、ぼくが音楽をはじめたのが、「人からどう見られているのか」がすごい気になっていた時期なんですよね。そういう自分が悲しいと思って曲ができた。最初からクオリティを求めていたというよりも、自分がそういう感情を発散できればいいやと思っていたんです。

紗倉:ぼくりりさんは、自分が気になったこととかを、何かしら残そうとするところが強みだと思うんです。たぶん、多くの人は何かやりたいと思ったとしても、どこにぶつけていいのかわからずモヤモヤしてしまう。自分のできないことをしている人をインターネットで見つけて、叩いてしまうのかもしれませんね。それはかわいそうだから、中高生の子たちにはそうなってほしくないですよね。

ぼくりり:そうですね。自分を表現できる先があると、いろいろ救われると思います。どんなに才能があったとしても、実際にやってみないとわからないじゃないですか。トライしてないから見つかっていない才能もたくさんあるとおもいます。ぼくは比較的音楽という見つけやすいところにあったけど、無限に試しまくったら、盆栽だったり、ゴルフだったり、けっこうあると思うんですよ。

紗倉:失敗して死ぬわけじゃないですからね。自分の失敗は自分で見届けるもので、人に見届けてもらうものじゃない。失敗を恐れることは、自分を恐れることと等しいので、そんなに自分を怖がる必要はないんじゃないかと思いますね。

ぼくりり:そもそも人の失敗ってべつに覚えてないですしね。

紗倉:自分の中では黒歴史でも、ほかの人は全然覚えてないですよ。私はよく60歳になった自分のことを考えるんです。おばあちゃんになったら、今悩んでいることや恐れていることに「かわいらしい悩みね」と言えるようになる。だから、踏み出す勇気がないなら、今の自分から離れてみるのがいいと思います。60歳の自分からしたら「60歳まで生きるんだから、それぐらい大したことないよ」と言ってるでしょうし。

ぼくりり:最後に、紗倉さんの次の目的ってなんですか?

紗倉:若くてかわいい子がじゃんじゃん入る業界の構造もわかってきましたので、「1位になりたい」とか、競い合うこととかがどうでもよくなってきています。

漠然としているんですが、これからはブランドのロゴをはればそのものに価値が生まれるように、自分の名前がついただけでそのものが輝ければいいなと思っています。

それに、この業界じゃなければ自分の名前は知られてなかったと思うし、だからこの業界に恩返ししたいという気持ちもあります。いろいろ言われがちな業界なので、光があるから影もあるし、光が当たっている部分も見てほしいなと思いますね。

Text_Potato Yamamoto